今回のインタビューは、『ORCHUN CROWN』代表である中江大樹さん。
学生時代からカンボジアでのボランティア活動に従事。「井戸」や「学校」といった日本人定番のボランティア活動の問題点や矛盾などから、石鹸をつかった「手洗い」のボランティアを開始。「衛生」という概念のないカンボジアで草の根的に活動し、実績をあげる。
カンボジアにおける学生のボランティア活動のおかしな実態とその問題点は?ボランティアされる側のカンボジア社会の課題は?
学生ボランティア活動の裏側を知り尽くし、カンボジア社会にも深く入り込んでいる中江大樹氏に、たっぷりと語っていただきました!
『ORCHUN CROWN』代表、『C.S.Design Office』デザイナー、『関西カンボジアネットワーク』副代表。
学生時代から、ボランティア、ビジネスにおいて、カンボジアと深くかかわる。
日本とカンボジアを行き来して、関係強化、発展に尽力している。
今回の中江大樹さんとの対談インタビューラインナップ!
本記事は、全5本のインタビュー動画の4本目となります。
1本目 石鹸が命を救う?学校を作るボランティアの問題点と葛藤から選んだ道とは?
2本目 井戸掘りボランティアは大迷惑?掘ることより大事なこととは?
3本目 アパレルビジネスで手痛い失敗?納期遅れの無限ループとは?
4本目 死ぬかと思った!コレラから命を救った伝統療法「クルクメール」とは?
5本目 中江氏の今後の展開とビジョンとは?心に留める近江商人の教えとは?
特別動画 中江大樹さんからあなたへのメッセージ
生の声、現地のライブ感が伝わる【動画版】はコチラ!
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コレラも治す?カンボジア伝統医療「クルクメール」って何?
中江大樹(以下、中江):次はもう全然、ジャンルが全然違うんですけど、カンボジアの伝統医療に興味を持ちまして。具体的にはこっちの有用植物、ハーブとかなんですけども、それは話をちょっと戻して、NGOのときに僕が活動してたのが、さっき言ったようにコレラとかチフスとかっていう病気が、かなり広い範囲で蔓延していた・・・
中西賢一(以下、中西):ちょっと衛生的じゃない不衛生なところね。
中江:そこで、僕は自分自身が活動中にコレラにかかりまして。
中西:コレラ(笑)なかなかかからないコレラですね。(笑)
中江:なかなか日本ではかからない病気なんですけど、かかりまして。
中西:コレラってかかるとどうなっちゃうんですか?
中江:猛烈な下痢に襲われまして、下痢だけでもきついんですけど、熱もかなり・・・
中西:高熱で・・・
中江:40度ぐらい出て・・・
中西:そんな・・・それ、死にますよね、普通。
中江:「ウィキペディア」で調べたら、致死率75%と出てきて、そんなのにかかったんです。僕もそれ、村の中でかかったんで、なかなか救急車も来れるようなところじゃなく、意識を失いまして、そのまま。で、これはやばいなと思ったんですけど、その晩に「クルクメール」っていう、こちらの伝統医療師の長老みたいなおじいちゃんがいるんですけど、家まで来てもらって・・・
中西:クルクメールはそのとき・・・職業と考えていいですか、それは?
中江:職業は・・・
中西:伝統医療イコール、クルクメール?
中江:そうです。伝統医療、民間療法の知識を代々伝承してきたものみたいな、そういうイメージなんですけど。そのクルクメールのおじいちゃんに来てもらって、で、僕は意識朦朧としている中で、いろんな草の葉っぱとか、根っことか、木の皮とかいろんなものを包んで持ってきて、すり鉢でガーッと擦った、ジュルジュルの・・・
中西:いかにも伝統医療。
中江:もうジュルジュルの、もう儀式めいたやつ、生薬を飲ましてもらって・・・
中西:アニメみたいですね。なんかマンガの世界みたいですね、それ。
中江:身体をなんかマッサージみたいなこともしてもらって、いろいろやってもらって、それまでは、半信半疑やったんですよ。ほんまなんかうさん臭い、「ほんまに効くんかいな」という感じだったんですけど。よく朝、ほんまに熱もかなり治まって、下痢もかなり楽になったんですよ。「あ、ほんまに効いたんや」と。
中西:効いたんですね。(笑)
中江:それを機にカンボジア伝統医療、クルクメールを信じざるを得なくなったというか・・・
中西:コレラが・・・
中江:これはすごいなと。という経験があったんですけど。そのあと、ちょっと興味を持って見てみれば、カンボジア料理って、そういう有用植物って呼ばれるハーブとか、野菜とかをふんだんに取り入れた料理だったりとか、結構そんなんを垣間見る瞬間っていうのがあったんですね。 日本でもそうかもしれないんですけど、例えば火傷をしたときに、アロエを中の果肉のところを塗りなさいとか、よもぎをすり潰した汁が効くとか、いろいろなのがあるじゃないですか、お祖母ちゃんの知恵袋的なのが。そんなんが昔はあったんだと思うんです、カンボジアにも。でも、今の若い人はやっぱりどんどん使わなくなっていって、どんどん生活からかけ離れていく。
中西:クルクメールっていうのは、結構都市部ではもうちょっと忘れられているっていうか、村だからあったみたいな・・・
中江:そうですね。プノンペンとかシェムリアップは、もう外資系の出資の病院も入ってきている。西洋の薬もいっぱい薬局で売っているんで、なかなかそんなに頼りにされるようなものではないんですけども。でも、これは日本でもカンボジアでも言えることで、病気っていうのは、なってから治すんじゃなくて、なる前に予防するっていうのが大前提だと思うんです。
中西:じゃあ、そのクルクメールって体験したのは、対処法とか、それで治ったんですけど、本来は、クルクメールのものっていうのは、予防とか・・・
中江:そうですね。免疫力を高めたりとか、漢方医療とかもルーツは似てると思うんですけども、インドのアーユルヴェーダとかもあんな派生したやつを・・・
中西:じゃあ、毎日の食生活からいつも予防しているみたいな、そんな感じが本来の使い方と。
カンボジアの伝統医療をもっと身近に!
中江:そうですね。カンボジアの人の場合は、特に医療費も高いんで、病院になかなか行けへんとかするんで。だから、そのためにも予防医療にもっと力を入れるべきだっていうのを思うんですけど、日本でも一緒で、病気になってからではなかなか治らへん病気もある。 だったら予防医療の大切さというのは、日本でも共通することなんかなあと思ったんですけど。そういったものを、今の現代の人でも身近に感じてもらえるようなハーブティーのようなものとか、料理に使えるハーブとかそういうものをこっちで作れたらいいなというふうに・・・
中西:カンボジアのハーブを日本へ・・・
中江:そうですね。特に日本でもちょっとおしゃれな女の子とか、ハーブティーを飲んだりとか。ヨーロッパでもいるじゃないですか?
中西:カモミールとかね。
中江:北欧にあるのだけじゃなくて、アジアにもそういうハーブがあるんだよというのを知ってもらいたくて。またそれをカンボジアの人にも知ってほしいですね。
中西:カンボジアの人ってハーブティはあまり飲んでないんですか?
中江:昔は飲んでたんだと思うんですよ。クルクメールがいた時代。内戦が起こる前は飲んでたと思うんですけど、今は、今いるようなこういうおしゃれなカフェとかにコーヒーはあっても、お茶ってあんまり見ないんですよね。リプトンとかのティーバックのあればっかりなんで。そうじゃなくて、せっかく自分の国そんなええものがあるんやったら、それをもっと使ってもらいたいなと。 今の若い世代にももう1回再認識してもらいたいなということで、外国人である僕が製品化して、ブランディングして、で、日本であったり、海外であったりの人に「あ、ええやん」って言ってもらったものをカンボジアでも広めていきたいって逆輸入ですよ。日本でもアメリカとか、欧米の人が「オウ、クールジャパン」とか言い始めて、日本の地域ブランドが活性化したりしたりとかって・・・
中西:ありますよね。外人の人がやけに感動しちゃってね。
中江:そうですよね。そんなんが、こっちでも起こるんちゃうかなと思うんですよね。「クール・クマエ(カンボジアのこと)」じゃないですけど(笑)
中西:なるほどね。それでハーブね。結構それはもうある程度商品化というか、ある程度目星はつけてるんですか、どういうハーブがいいとかなんかするのは?
中江:そうですね。でも、なんかそんなに凝ったものじゃなくて、結構身近にあるもののほうがいいんじゃないかと思って、シェムリアップとかだったら、ハーブ農園みたいなかたちじゃなくて、結構回りに自生しているものも多いんですよ。例えばその辺に生えてるハスの花とかプルメリアとか。
中西:白い花ですね。
中江:あの花びらなんかを乾燥させて飲んだりするのは、結構、おじいちゃんおばあちゃん世代はやったりするんですけど、今の世代の人はしなかったりするんですよ。そういう身近にあるものとかで、レモングラスも庭に普通に生えてたりするんで。
中西:生えてるんですか?
中江:そうなんですよ。わりと活用してもらえるものが多いんで、そういったものをもっと活かして、都市部シェムリアップも、ちょっと中級から、高級なって呼ばれるレストランとか、ホテルなんかで使ってもらったりとかしながら、もっとカンボジア人の身近なところにどんどん流行っていってくれたらいいなと思うんですけども。
中西:そうですよねえ。それはもう壮大なねえ。
中江:そうなんですよ、できたらええなと思いますけどね。
中西:それで、日本にそれを輸出したりとか、日本というか、カンボジアの食べ物自体があまり知られてないですからね。
中江:そうですね。まだまだ、カンボジアってマイナーな国・・・
中西:「カンボジアの有名料理って何?」って聞かれたら多分みんな分からないですよね。
中江:そうですよねえ。
中西:だから、なかなか認知度を上げるということでもなかなか大変だとかね。
中江:そうですよね。でも結構昔から実はカンボジアと日本とのやりとり、貿易というのはあったりして。例えばカンボジアが由来になっているカボチャって・・・
中西:あ、あれカンボジアが由来なんですか、カボチャって?
中江:そうなんです。カンボジアから来たから、カンボジア、カンボジャ、カボチャ、カボチャみたいな。
中西:そうだったんですか、カボチャって? (笑)へえー。
中江:そうなんですよ。ということがあったりとか、結構、でも、探したらいろいろあって、タバコの「キセル」ってあるじゃないですか? あれもクメール語の「キセル」から来てたりとか、昔からそういうなんかやり取りがあった名残なのかなあとか思って。焼酎とか泡盛。あれも昔5世紀、6世紀ぐらいかなあ、アンコール王朝ができるより前のカンボジア人が日本まで伝播してきたものだったりとか。
中西:そうなんですか?
中江:そうなんですよ。なんかやり取りは昔はあったらしいんですけども。
つづきます ⇒ (5本目 中江氏の今後の展開とビジョンとは?心に留める近江商人の教えとは?)
【海外どうでしょう】管理人:中西 賢一
■ インタビュー日:2015.02.13